
いったい病理医ってなんですかという話。一般の方々にはなかなか馴染みが薄いと。で、病理医ってなんですか。お医者さん、お医者さんであるのには間違いない。で、耳鼻科なのか内科なのかよく分からない人になっていますが、医者と名のつくもの、獣医さんもいれば樹木医というのも最近ではあるようですが、じゃあ病理医ってなんですか。「私は病理医です、病理医です」といっても、一時期は「料理のお医者さんですか?料理医、料理医、料理のお医者さんですか」というふうにも、笑い話のようで笑えない話なのですが、こういうふうに言われてきた時代もありました。ただ、この話は当たらずとも遠からずで、我々の仕事というのは、ありとあらゆる食材を相手に、いろんなそれに対して処理を施して、それを味をみて鑑定をするという調理師のような仕事であります。実際ナイフを使うこともありますし、ホットプレートを使うこともある。電子レンジを使うこともあるし、圧力釜を実際使うこともございます。ただ、残念なことに、病院に常勤の病理医がいるのを知っていたのは中学3年生では200人中1人。なんと、医学部の学生におきましても低学年では3割にすぎないというふうな報告もございます。
で、病理の医者が実際どういうことをしているかと言いますと、胃の調子がよくないと、近くの内科を受診して、胃カメラを勧められます。胃カメラをしてそうした病変の一部を取って、検査しておきましょうというのが普通の流れです。必ずこの時に「1、2週間後に結果が出ますのでもう一度来院してください」というふうに胃カメラをする先生が言われると思います。で、その後、臨床医によって結果の説明が行われる。では病理の医者はどこで仕事をしているかと言いますと、この部分で、実は陰で仕事をしているわけでございます。

一つの腫瘍の例を挙げますと、これなんか見ますと非常に複雑な形を呈しています。ここに血管が真ん中を走っているんですが、乳頭状に、こういうのを乳頭状のパターンと言いますが、非常に複雑な形をとっていますが、逆に言うと特徴の非常に出ている腫瘍です。で、もう一つ、これはどちらかと言えば、特徴に乏しい。なんか細胞がたくさんありますけど、どういう配列しているのかよく分からない。そういう特徴の乏しいパターンをとっております。こちらが上皮性の腫瘍で、こっちが脳腫瘍です。上皮性の腫瘍は特徴のある配列を示すのに対しまして、脳腫瘍では配列の特徴がつかみにくい傾向にあります。

小児脳腫瘍の病理診断がむずかしいのはなぜかということで、個々の組織型がとてもまれで、一般病理医にはなじみが薄い。細胞の配列の特徴がつかみにくい。採取組織が小さい場合、腫瘍全体を反映していない可能性がある。悪性に見える良性の悪性脳腫瘍が存在している。同じような名前がついてても、いろんな組織型があったり、あるいは腫瘍以外の細胞成分が混じっていることがあって、そういうあたりが診断を難しくしている一つの理由ではないかと思っております。今回ちょっととりとめのないような話になりましたが、この辺で終わらせていただきます。どうもご静聴ありがとうございました。