脳腫瘍とは
兵庫県立こども病院脳神経外科・部長 長嶋 達也
脳腫瘍の種類脳腫瘍とは脳に出来た腫瘍の総称であり、一つの腫瘍を示すものではなく、脳に存在する様々な 細胞から腫瘍が発生します。脳の中には、まず、神経細胞がありますが、分裂能を持たない細胞の ため腫瘍が生じることは稀です。一方、神経細胞と神経細胞の間に膠(にかわ)のように存在する、 神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)は、様々な刺激によって分裂する能力を持つこと、また数が多い ことから、高頻度に腫瘍を形成します。神経膠細胞から生じる一群の腫瘍を神経膠腫(グリオーマ) と呼びます。グリオーマには、星状神経膠細胞、乏突起神経膠細胞などの種類があり、それぞれ異 なった性質の腫瘍が発生します。また、それぞれのグリオーマの悪性度によってもグレード1から4 まで(高いほど悪性)分類されるため、グリオーマ一つをとっても、実に様々な病理診断が下される ことになります。病理診断は手術によって摘出した腫瘍組織を薄い切片にして、様々な染色法を加 えて病理専門医が決定します。治療はこの病理診断に基づいて成されるため極めて重要です。 小脳には胎生期の未分化な神経上皮細胞、すなわち神経細胞と神経膠細胞に分かれる前の細胞 が存在し、その細胞からは髄芽腫(ずいがしゅ)が発生します。一方、松果体部や神経-下垂体部に は、非常に未熟な胚細胞(はいさいぼう)が存在し、それから胚細胞腫が発生します。胚細胞腫には 様々な種類の腫瘍が含まれており治療に対する反応も異なります。下垂体の周囲には、下垂体腺腫 や頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)というような腫瘍も発生します。グリオーマ、髄芽腫、胚細胞腫に 関してはそれぞれ坂本先生、原先生、松谷先生からお話があります。 脳腫瘍は細胞の起源により大きく分類を示されます(図2)。脳が形成される過程の非常に早い時期 に存在する神経上皮細胞から分類1のA-Hに示す様々な細胞が分化します。 グリオーマと髄芽腫は、いずれも神経上皮系腫瘍に分類されますが、髄芽腫はより未熟な細胞に由来 します。分類2以下の腫瘍も様々な種類の腫瘍に細分類されることから、脳腫瘍の組織分類は膨大な ものになるため、ここにはその一部を示すにとどめます。 <こどもに多い脳腫瘍>
小児脳腫瘍の種類と発生頻度は、グリオーマの中の星細胞系腫瘍の頻度が最も高く、髄芽腫、 胚細胞腫がそれに続きます(図3)。この3種類の腫瘍は、小児期に頻度が高い腫瘍であるという ことに加えて、外科的治療以外に化学療法や放射線治療など、複数の専門家による集学的治療 が必要であるという特徴を有します。 | |
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