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脳腫瘍とは
兵庫県立こども病院脳神経外科・部長 長嶋 達也
脳腫瘍の治療脳腫瘍の治療という面から見ると、脳腫瘍は概ね3種類に大別することが出来ます。 すなわち、外科的治療が第1であり、手術により全摘出すると治る腫瘍というものがあります。 例えば小脳星細胞腫、脈絡叢乳頭腫、上衣腫の一部などは全摘出できれば治癒します。 小児に発生した、左側脳室内の大きな脈絡叢乳頭腫を示します(図13)。側頭葉の一部を切開 することにより全摘出が可能であり、それにより治癒して術後に何ら神経症状を残しません。 ![]() 一方、全摘出できれば治るのだけれども、しばしばそれが困難である一群の腫瘍があります。 例えば、頭蓋咽頭腫の様に発生部位が手術困難なため安全な全摘出が困難な場合があります。 このような場合には部分摘出にとどめて放射線照射を追加したり、再発時に再び手術を行ったり します。視床下部・下垂体部に生じた頭蓋咽頭腫の例を示します(図14)。 ![]() そして最後に、外科的治療だけでは治すことができない悪性脳腫瘍のように、集学的治療が不可欠な 腫瘍があります。グリオーマ、髄芽腫、胚細胞腫等の腫瘍では、外科的治療は治療のスタートポイントに 過ぎません。標準的な治療として、外科的治療、放射線治療、抗腫瘍剤を用いる化学療法の3つがあり ます。免疫療法や現在開発中の遺伝子治療などは、標準的治療と呼べるまでにはなっていません。 集学的治療とは、複数の専門家により異なった治療法を最も効率的に組み合わせて最良の効果を得る 治療法を意味します。小児脳腫瘍治療におけるキーワードは集学的治療であるといえます。 これらの腫瘍が集学的治療を必要とするのにはいくつかの理由があります。 グリオーマは、神経細胞と神経細胞の間に膠のように存在する神経膠細胞から発生するために、正常の 脳組織の中にしみこむように発育する性質を有しています(図15、Netter図譜より引用)。 ![]() 例えば、脳深部の基底核部に発生したグリオーマでは、正常脳組織と置き換わるように発育している ために、腫瘍を摘出することはすなわち脳組織を摘出することになってしまうため外科的治療は不可 能です(図16、脳幹部グリオーマ)。 ![]() また、髄芽腫や悪性の胚細胞腫、グリオーマの中でも悪性度の高い神経膠芽腫などは 脳組織に浸潤するのみならず、髄液に乗って遠くに転移する性質があります(図17)。 ![]() これらの腫瘍は、やっかいな性質を持っているとはいうものの、一方では放射線や化学療法に対する 感受性が高いという性質も併せ持っています。腫瘍を部分摘出した後に、化学療法を行うことにより短 時間で腫瘍が消失することもあります(図18)。このように、放射線や化学療法が有効であるということ によって、治療への希望をつなぐことが出来ます。 ![]() | |
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