上衣腫
大阪市立総合医療センター  北野 昌平

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水頭症の治療について

 左右の大脳の中にある側脳室は髄液が形成され貯えられる場所です。そこで産生された髄液は側脳室内部を流れてモンロー孔という孔から第3脳室に流入します。(図2参照)第3脳室の後ろ側には中脳水道という幅が狭くなった場所がありこの狭い部分を髄液が通過して第4脳室に到達します。その後、第4脳室の真ん中(マジャンディー孔)と両脇にある孔(ルシュカ孔)から脳の外にでて一部は脊髄の表面を流れ、残りは脳表面にあるくも膜下腔を流れます。最終的には頭頂部で硬膜静脈洞に吸収されます。

 このような髄液は一日に約500mlも産生され、全体の髄液(約150ml)が3回程度入れ代わるように循環しています。腫瘍がこの髄液の循環を障害すると髄液が脳室に過剰に貯まり、脳室が拡大して脳の圧が上昇します。このような髄液が過剰に脳室に貯まる状態を水頭症と呼びます。水頭症の症状は頭痛や嘔吐、意識障害を起こします。さらに進行すれば、頭蓋内圧が上昇して昏睡になり、延髄の呼吸中枢が圧迫されて、呼吸停止を起こして死亡する危険があります。腫瘍が原因で水頭症を起こしている場合には、緊急に開頭手術をして腫瘍を取り除き髄液循環を改善するか、拡大した脳室に管を入れて髄液を取り除く必要があります。髄液を脳室から取り除く方法は脳室にシリコン製のチューブを入れて体外に髄液を取り出す方法(1.脳室ドレナージ)とシリコン製のチューブを皮膚の下に埋め込んで腹腔に流す方法(2.脳室腹腔短絡術)があります。最近では第3脳室の底に孔をあけて、髄液を脳の外あるくも膜下腔に逃す方法(3.内視鏡的第3脳室開窓術)が行われることもあります。

図2
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