グリオーマ
大阪市立総合医療センター小児脳神経外科   坂本 博昭

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グリオーマとは

 腫瘍のもとになる細胞によって腫瘍を分類すると述べましたが、グリオーマはどんな細胞がもとになっていると考えられているのでしょうか?脳を構成する細胞は、神経活動を起こす神経細胞と、その神経細胞の周りに存在して神経細胞の働きを助ける神経膠(しんけいこう)細胞と、大きく2種類があります。膠(こう)細胞はグリア細胞と英語で呼ばれています。

 「グリオーマ」という言葉は、「グリ」と「オーマ」が結合して1つの言葉となっています。「グリ」というのは、グリアのこと、すなわちグリア細胞のことです。グリオーマの後半の「オーマ」は腫瘍という意味です。ですからグリオーマとは脳組織のグリア(神経膠)細胞から発生した腫瘍という意味です。グリア(神経膠)細胞は脳のどこにもありますので、この細胞から発生するグリオーマは脳のどこにでも発生することになります。グリア細胞の種類は星(せい)細胞、乏突起膠(ぼうとっきこう)細胞、上衣(じょうい)細胞、脈絡叢(みゃくらくそう)細胞など数種類あります(図1)。それぞれのグリア細胞から発生したと考えられている腫瘍は、星細胞腫、乏突起膠細胞腫(小児ではまれにしか発生しない)、上衣腫、脈絡叢乳頭腫などと名前を付けられています。

図1
グリオーマの図

 グリオーマは小児の脳腫瘍のなかで約40%と頻度が高い腫瘍ですが、上に述べた細胞から発生すると考えられる腫瘍が何種類もあります(図2)。それぞれのグリア細胞が存在する脳の場所は決まっているので、腫瘍の脳の場所もほぼ決まっています。さらに、それぞれの腫瘍ごとに組織診断で良性、悪性と分類するわけです。星細胞腫は頻度が多いので、(図2)のようにこの腫瘍だけは悪性、良性と別々に頻度が示すことが出来ます。他のグリオーマの腫瘍でも良性と悪性の腫瘍があります。

図2
グリオーマの図

 グリオーマは脳の内部に発生するので、周囲の正常な脳との境界ははっきりしないことが多いのです。グリオーマは脳の内部に発生し周りの正常の脳をあまり壊さずに広がっていきます(腫瘍の浸潤)。このように、腫瘍と周りの正常の脳との境界が明らかではありませんので、手術で腫瘍を取り残すことなく全部摘出することは難しいことが多いのです。そのため、摘出できない腫瘍細胞を化学療法や放射線治療の治療を追加して腫瘍をやっつける必要があります。 (図3)。

図3
グリオーマの図

 腫瘍の良性や悪性の程度は、正常の細胞とは異なり細胞分裂のコントロールを失って勝手 にどんどん細胞分裂して腫瘍が短時間で大きくなる悪性のものから、あまり活発ではないが細胞分裂が勝手に起こる良性の腫瘍、その中間の性質を持つ中ぐらいの悪性のものもあります。グリオーマと聞いても、腫瘍の治りやすさや治りにくさ(腫瘍の悪性度)は腫瘍の発生場所と良性か悪性かなど組織診断から判断します。確かに例外はありますし、一旦診断できても時間がたてば良性から悪性に変化する例もありますので、気をつけないといけません。上衣腫のように腫瘍の細胞自体は良性に見えても再発を繰り返しやすく、経過からすると悪性と考えたほうが良い腫瘍もあります。

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