グリオーマ
大阪市立総合医療センター小児脳神経外科   坂本 博昭

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患者側と治療側の関係

最後に、患者(家族)側と治療側との関係について私が感じたことを少し話させてください。セカンドオピニオンを求めて診察した例や、いろいろな病気の相談会で患者や患者家族の方とお話をした経験からは、患者側、治療側、どちらも病気の子供が元気になるように一生懸命ですが、両者の関係がうまくいっていない場合が少なくありません。患者側が医師からの話を聞く際に、患者側は心配で心配でしょうがなく、緊張しいらいらします。一方、医師の方も脳腫瘍という困った病気の話を患者やその保護者に話をするときには、緊張し言葉を選んでしゃべり、信頼関係がうまくいくように考えています。医師の方が慣れていなくて、患者側の緊張した気持ちに配慮が十分ではなく、一方的に病気の話しをしてしまう場合があります。逆に、患者側が心配の気持ちが勝ちすぎて、もっと早く分からなかったのかなどと医師を問い詰めるように質問をされることがあります。

 医師からの説明の時には、診断名と腫瘍の発生した場所を聞き、その病気であればどのような経過を取るかをよく聞いて理解することが大切です。すぐ入院しないといけないようであれば、その理由もしっかり聞いておくことも必要です。治療の副作用には特にがんばって聞きましょう。 医師はできるだけわかりやすいように話をするように努力しますが、医師なら誰でも知っているような常識が必ずしも一般の方の常識ではないことを忘れてしまって、話を進めることが多いので、医師の説明がわからなかったりすればそのことを医師に伝えてください。話し方が早かったり、専門用語がわからなかったりすれば、「アノー、○○という言葉は専門的でわかりにくいので、どういう意味でしょうか?」とか、「そうすると、○○ということになりますか?」と、医師のしゃべる間に合いの手を入れて、少しづつ理解しているかどうか確認しながら話を聞くのがよいと思います。

 もし医師の説明が納得いかず、治療に時間的余裕があれば、信頼できる家族と一緒に説明を聞く機会を改めて設けてもらうことを申し出ることがよいでしょう。すこし勇気がいりますが、そうしないと大切な子供がどんな治療を受けるかわからずじまいとなります。このような申し出をして気分を害する表情をする医師は、治療には熱心かもしれませんが、患者側の希望を受け入れてくれない場合が多いかもしれません。患者側も治療側もお互いに忙しいのはわかっていますが、大切な子供さんにかかわることですから、無理をしてでも話をする機会を作ることが保護者の義務と思いますし、医師も緊急の治療開始が必要でなければ、2回以上の説明をする余裕を持つようにしています。このような希望を患者側から言うと、怒り出したりするような困った医師の場合は相談室などを通じて病院側に伝えるべきでしょう。患者側が夜遅くや休日でないと病院に来られないとか、片親だけに説明を聞かせて治療方針の決定を任せるような常識のない要求をしていなければ、治療側は説明の機会を作ってくれるはずです。直接医師にそのことを言いにくいと思えば、看護師や病院の相談室に相談してその希望を伝えてもらって説明の機会を作ってください。

 患者側(保護者)は自分の子の病気について勉強しないといけません。医師から聴いた病名などの情報と本やインターネットなどで仕入れた知識をあわせて、何がわからないかを次に治療側と話しをする前に箇条書きにしておくと考えが整理できます。保護者が治療方針を決定するときに、どんな情報があれば判断しやすいか、何を聞かないと判断できないか、などを明らかにできます。また、不明な点については、今までの報告例がないかどうか、治療側に調べて来てもらうようにお願いすることも必要な場合があります。

 最近では、セカンドオピニオンを他の医師に求めることは多くなっています。治療に時間的余裕があるのであれば、その希望を医師に伝えて紹介状を書いてもらい、MRIなどの画像検査を借りて他の病院に相談に行きます。セカンドオピニオンを希望して来院された場合、紹介状や画像検査など患者さんの情報を持って来て頂かなければ、一般的な病気の助言に終わってしまい、相談したい項目について十分相談できないことがよくあります。

 家族の方は脳腫瘍という病名を聞かされて、最初はショックで何も考えられなくなりますが、できるだけ冷静になって、なにができるかを考えてください。患者側と医療側の信頼関係を作り、専門の分野の治療者たちと協力しながら難しい病気に対処していきましょう(図26)。


図26
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