グリオーマ
大阪市立総合医療センター小児脳神経外科   坂本 博昭

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大脳グリオーマ

図5
グリオーマの図

 大脳は運動の中枢、言語の中枢、視覚の中枢があり、それぞれの脳の場所に応じたはたらき があり、さらに体の外部や内部から発生した神経の信号が伝わって、ものを考えたり判断するな どヒトとして日常の生活に必要な脳の大切な機能があります。このような重要な働きを持つ部分 を外れて腫瘍が発生すれば、脳の障害による症状をほとんど出さないで腫瘍を摘出することが 可能です。良性であれば腫瘍の細胞は分裂する力が弱いため、わずかに腫瘍が残ったとしても 腫瘍の細胞は死んでしまい、再発せずに治る例があります。少しでも悪性の所見が摘出した標 本に見られれば、残った腫瘍に対して放射線治療を行ったり、化学療法の試みを行うことを考慮 することを考えたほうが良いでしょう。

 (図6)は良性の大脳グリオーマの例です。左眼の後ろに当たる側頭葉(そくとうよう)にMRIで 白く見る部分が腫瘍です(矢印で囲まれている)。この部分は摘出しても大きな障害がでないた め、できるだけ腫瘍を摘出しました。摘出した標本から組織診断は良性のグリオーマ(びまん性 星状細胞腫)でした。再発すれば放射線治療を行おうと経過観察してきましたが、8年後でも再 発はなく症状もなく経過は良好です。

図6
グリオーマの図

 (図7)は左側の運動中枢の近くにできた腫瘍です。運動中枢に近いところに発生した腫瘍だ ったので、大きい範囲で腫瘍を摘出すると右側の手足(正確には上肢と下肢)の麻痺が術後に 悪化してしまうため、完全には摘出できませんでした。組織診断は悪性のグリオーマ(膠芽腫) でしたので、残った腫瘍の部分に放射線治療を行いました。術後腫瘍はしばらくの間は大きさは 変化なかったのですが、術後1年後に腫瘍が大きくなり、左側と右側の大脳をつなぐ脳の部分か ら腫瘍が反対側にも広がりました。さらに、頭の骨に囲まれた空間で腫瘍が大きくなって正常の 脳の部分を圧迫し、症状がでてから1歳3ヵ月後に亡くなりなした。このように悪性のグリオーマ ではできるだけ摘出し、術後に放射線治療をしても再発しやすく、ほとんどの例で発病後1年から 数年で亡くなるとされています。このように、大脳の悪性グリオーマはいろいろな治療を行っても 効果が期待できない最も治療が難しい腫瘍です。

図7
グリオーマの図
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