グリオーマ
大阪市立総合医療センター小児脳神経外科   坂本 博昭

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脳幹グリオーマ

 脳幹は血圧、呼吸、意識を維持する働きを持ち、視床下部よりもさらに直接的に生命を維持する ような機能を持っている場所です。また、脳幹が障害されれば、血圧、呼吸、意識が維持できなく なるばかりでなく、顔がゆがんだりまぶたがとじなくなったりする顔の動きの麻痺(顔面神経麻)、 眼の動きの障害(外転神経麻痺)、歩くときのふらつきがでます。さらに、ものを飲み込んだり声を 出す筋肉の麻痺(球麻痺)が発生することになります。この状態では口から食事をすると気管を詰 めて窒息したり、痰が十分に外に出せずに肺炎を起こしやすいため、生命の維持が危険となります。 脳幹グリオーマでは周囲への浸潤があり、脳との境界が分かりにくいため、このような重大な神経 の障害を出さずに摘出することは大変難しいことになります。この脳幹に発生しやすいグリオーマ には、脳幹全体が腫れたようなびまん性の型と脳幹の一部に腫瘍が発生している限局型の2種類 に分けられ、主にMRIで判断します(図12)。「びまん性」とは周囲の脳との間に境目がはっきりしない 状態をさし、脳幹全体が腫れたようにMRIで見えます。びまん性の型は80から90%と頻度が多く、その ほとんどが悪性のグリオーマです。一方、限局性の型は良性のグリオーマが多いといわれています。

図12
グリオーマの図

 (図13)はびまん性脳幹部腫瘍の例で、MRIで脳幹自体が太くなり、脳幹の内部に造影剤が集まって 白く見える部分が腫瘍に当たりますが、腫瘍は脳幹全体に浸潤して広がっていると思われます。脳幹 の外側に腫瘍が顔を出ているところはないので、摘出や生検による組織診断は行わず、症状や症状 の進行の状態やMRIの結果から、脳幹部に発生したびまん性グリオーマと診断しました。腫瘍の部分 に放射線治療を行いますと、一人で歩けるようになるなど症状はみるみるよくなり、退院して学校へ行 けるくらいに元気になりました。しかし、その後腫瘍が再度増大して症状は徐々に悪化し、症状が出て から約1年で亡くなりました。

図13
グリオーマの図

 びまん性のグリオーマでは放射線治療は有効ですが、治してしまうほどの効果はありません。 化学療法はほとんど効果がないとされています。症状が出てから1年程度で亡くなる例が非常に多く、 小児に見られる最も悪性の脳腫瘍として知られております。  (図14)は限局性の脳幹部腫瘍です。造影剤が集まって白く見える部分が腫瘍の部分で、脳幹から 飛び出したように発育しています。脳幹部は触らないように外科的に摘出したところ、良性のグリオーマ でした。再度腫瘍が大きくなってくれば放射線治療を行う予定で経過を見ていますが、大きくならないの でそのまま経過観察しています。

図14
グリオーマの図
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