放射線療法の合併症
放射線療法の合併症には照射している期間におこる急性合併症とある程度時間をおいて
数ヶ月後数年後におこる晩期合併症があります。急性合併症は食欲不振,倦怠感,照射
部の脱毛や皮膚炎などですが,これは放射線療法が終わると改善します。
晩期合併症は時間がたったあとでおこるもので,小児脳腫瘍の治療の際の代表的な合併
症(急性合併症と晩期合併症)を下記に示します。
- 知能障害
- これは全脳照射の場合に問題になる合併症ですが,髄芽腫の場合標準的な36Gyの全脳全脊髄照射を行った場合,IQは10から20低下するといわれています。特に6歳以下の患者さんで低下する可能性が強いといわれています。そのため全脳照射を少しでも減らして今までと同等の治療効果を上げるべく治療戦略が練られている段階です。
- ホルモン異常
- 脳の中に下垂体という部分があり,そこから色々なホルモンが作られています。そのホルモンの中で成長ホルモンが一番放射線療法の影響を受けやすいものです。下垂体に24Gyの放射線療法を照射されれば多くの症例で成長ホルモンの分泌障害がおこり,成長障害を来すことが知られています。18Gyだと成長ホルモンの分泌障害が少なくなるといれています
- 脳血管障害
- 下垂体の近くに脳の主要な血管が集中していますが,放射線療法を行うことによりそれらの血管に閉塞がおこる可能性があることが知られています。平均で放射線療法後3年でおこり,脳梗塞の症状が発生します。
- 二次発癌
- 放射線療法の中で最もおそれられている合併症ではないかと思いますが,脳に放射線療法をうけると他の脳腫瘍がおこる確率は健常に比べ1.4倍の確率でおこるといわれています。また,5年以上神戸大学で経過をおえた脳に照射された子の中で3%に脳腫瘍が発生しています。脳腫瘍の中で多いのは髄膜腫と膠芽腫です。それぞれの症例を図3,図4に示します。
図3;合併症
図4;合併症;2次発癌
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膠芽腫 急性白血病予防的全脳照射治療後5年 |