髄芽腫とPNET
大阪市立総合医療センター小児血液腫瘍科部長   原 純一

1 章  2 章  3 章  4 章  5 章  6 章  7 章  8 章 

海外の治療法開発の歴史と現在の状況

脳腫瘍の治療にあたり、可能なかぎり生存率を上げることが第一目標となる。しかし、小児の場合は正常な発達と成長も同時に得る必要があるが、この二つの目標は、ある程度相反する関係にある。この両者をどのようにバランスをとって、より良い結果に持って行くかが課題である。

かつての髄芽腫/PNETの治療は手術と放射線のみで治療されており、放射線は全脳と脊髄に36Gy、局所に55Gy照射するのが標準的であった。一方、化学療法の歴史は他の小児がんに比べ浅く、初めて化学療法のまとまった報告が出されたのは1990年であった。しかし、この時点の化学療法はまだ不十分なもので、全体では効果は認められなかった(図6)。

ただし、高リスク群では36Gyの放射線単独では生存率は0であったのに対し、化学療法併用では48%と有用性を認めた。

髄芽種初期

 1994年になって抗がん剤のシスプラチン、ビンクリスチン、CCNUを用いて転移のない患者で無進行生存率90%、転移のある患者で67%という結果が米国から報告された。しかも転移のない患者では全脳、脊髄への放射線量は従来の36Gyから23.4Gyに減量されており、髄芽腫に対する新たな治療の方向性が示された。その後、この治療法が大規模な臨床試験で追試され90%は79%に低下したが、いずれにしてもこの治療法はエポックメイキングであった(図7)。

髄芽種の治療

その後2000年に、転移のない患者で化学療法を用いない放射線単独治療の場合に必要な線量を決定するために、23.4Gyと36Gyの比較試験が行われ、生存率に差はないという結果が報告された。その結果、現在では転移のない標準リスク群の患者では23.4Gyの全脳全脊髄照射、高リスク群(転移あり)では36Gyというのが標準的な線量と考えられる。

 ただしこれらの線量は、中学生以下の子どもには障害がでる線量であり、そのためさらに線量を下げる試みがされている。米国で転移のない患者で全脳・脊髄への線量を18Gyに減量したパイロット試験が行われ、10人のうち7人が6年以上生存しており、しかもIQの低下は見られなかったという期待のもてる結果であった(表8)。これを受けて、現在米国ではシスプラチン、サイクロフォスファミドなどによる化学療法を併用することで23.4Gyを18Gyに減量できるかどうかを検証する臨床試験が進行中である(図8)。

治療の歴史
TOP
化学・放射線療法
各疾患の解説と治療
臨床試験関連情報