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日本小児脳腫瘍コンソーシアム 設立経緯

設立の経緯とその目的

小児がんは、抗がん剤や放射線治療が有効であり、治療の成否はいかに化学療法、手術、放射線治療を最適な条件で組み合わせるかにかかっています。

そのため、小児がんの治療は小児科の腫瘍専門医、小児外科医、放射線治療医が協力して行うことが普通となっています。小児脳腫瘍の分野も他の小児がんと同様であり、関連各科の協力関係が必須であります。私たちは関連各科が協力して高度な治療を行う組織として、近畿小児がん研究会脳腫瘍治療研究グループを1999年に他に先駆けて立ち上げ、従来の手術と放射線治療を主とした治療に化学療法を併用する治療プロトコールを作成し、良好な成績をあげることができました。2004年4月にはこのグループを発展させ、北海道から九州までの医療機関からなる全国的な組織である日本小児脳腫瘍コンソーシアム(JPBTC:Japanese Pediatric Brain Tumor Consortium)を設立いたしました。

コンソーシアムとは協同組合といった意味です。脳腫瘍の治療では腫瘍によるもの以外に治療による脳の障害を引き起こしやすく、特に発達途上にある小児では後遺症が残りやすく、治療にあたっても格段の配慮を必要とします。日本小児脳腫瘍コンソーシアムではより少ない後遺症でより高い治癒率が得られる治療法の開発と普及を目指します。

また、小児脳腫瘍に関する様々な情報提供を行っていく予定です。

小児脳腫瘍とチーム医療の必要性

〜脳外科、放射線科、小児科の連携による標準的治療の確立を目指して

 白血病などについては、すでに標準的治療(プロトコル)が確立され、白血病はもはや死の病ではなく、今や治る病気になったといわれています。

しかしながら脳腫瘍につきましては国内において「治る」といえる段階ではありません。患児は主に脳外科にかかり、放射線治療を受けます。放射線でたたくという方針のため40〜50Gy(グレイ:吸収線量)という高いレベルの放射線照射を余儀なくされることもあります。

これに対し、欧米では標準的治療が確立されています。化学療法と組み合わせることで、照射量を減らし晩期障害を軽減する方法が採られています。

放射線だけなら40〜50Gyのところが、化学療法を施すことで24〜36Gyの照射で抑えることができるのです。

これに習い国内でも化学療法と組み合わせた治療が進んでいます。例えば阪大病院では小児科による化学療法と組み合わせることで18Gyでも、放射線だけの40〜50Gyと同じ効果を出すことに成功しています。36Gyだと脳下垂体のホルモン分泌にかなりの影響(ex.成長ホルモン障害…身長130cm〜140cm)が出てしまうところを、影響がほとんどないとされる18Gyに抑えることができています。

しかしながら、この治療は国内のどこでも受けられるわけではありません。他の病院ではその病院の医師の知識と考え方(ex.放射線でたたいてしまおう)によるのです。その結果、命と引き換えに生涯に亘っての厳しいQOLを背負うことになります。

何故このようなことが起こるのでしょうか?かかる病院でこんなに結果が違うとは…。その原因は?

それは国内で標準的治療(小児脳腫瘍のプロトコル)が確立されていないからです。なぜ、プロトコルが確立されていないかというと、化学療法による治療のケースがまだ少ないということも言えますが、最も大きな要因は、医療の縦割りの壁によって、脳外科・放射線科と小児科の連携ができていないこと、すなわち欧米で執られているようなチーム医療(集学的治療)がまだまだ未熟な段階にあるためです。

2004年2月に開催したフォーラムでは以上のような小児脳腫瘍を取り巻く現状をご理解いただくとともに、欧米諸国に比べて立ち遅れているチーム医療への動きを加速すべきであるという提言をいたしました。今後ともご協力をよろしくお願い申し上げます。