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化学・放射線療法
各疾患の解説と治療
臨床試験関連情報

「乳幼児髄芽腫/PNETに対する多剤併用化学療法および大量化学療法の第II相試験」について


  • 試験の概要

     現在、髄芽腫(テント上PNET)は、手術、放射線、化学療法(抗がん剤による治療)を組み合わせて治療されています。しかし3歳に満たないお子さんは、脳が未成熟であるため、放射線治療によって重い障害を残してしまう可能性が高いと考えられます。ですから、放射線治療は極力避け、そのかわり複数の抗がん剤を組み合わせて、化学療法を強化するという治療戦略が行なわれています。その1つが、「大量化学療法」です。自分の造血幹細胞(すべての血液の元となる細胞)をあらかじめ凍結保存しておき、最大量の抗がん剤を投与した後に造血幹細胞を戻す(これを「自家造血幹細胞救援療法」といいます。)というものです。

    通常の化学療法を数コースと、「大量化学療法」を1コース組み合わせるという治療が、各国で行われています。しかしながら、がんの進行を抑えることができる患者さんの割合はおよそ30−50%にとどまっており、より良い治療法をさらに模索する必要があります。

     そこで我々は、新しい試みとして、通常の化学療法の後に「大量化学療法」を2回行うという治療法を考案しました。現在よく行われている治療法よりもさらに治療強度が強くなりますので、50%を超える患者さんのがんの進行を抑えることができると考えられます。

  • 対象となる方

    3歳未満の髄芽腫(テント上PNET)の患者さんです。

  • 治療の内容

     通常化学療法(ビンクリスチン、エトポシド、シスプラチン、シクロフォスファミドの組み合わせ)を4コース行った後に大量化学療法を2回行います(1回目:シスプラチン/シクロフォスファミド/エトポシド、2回目:チオテパ/メルファラン)。場合により、この後、手術や放射線を追加することもあります。全ての治療が終了するのに、およそ6-7ヶ月を要し、すべて入院治療で行います。

  • 臨床試験の目的

     従来の治療と比べてがんの進行をどれくらい抑えられるかどうかを調べます。あわせて、2回の大量化学療法が安全に行なえるかどうかを調べます。

  • 試験への予定参加人数

    全国の約50施設が参加します。試験には約40例のお子さんに参加していただく予定です。

  • 予想される効果と副作用

    <予想される効果>
     今までの治療法よりもさらに治療効果が高まるので、50%を超える患者さんで、がんの進行を抑えられる可能性があります。
    参考:日本小児脳腫瘍コンソーシアムの従来の成績
           ;(本臨床試験に比べて、大量化学療法が1回少ない治療法)
       髄芽腫13例中 6例が生存されています。
       テント上PNETの4例は、全員再発。
    <予想される副作用>
     複数の抗がん剤を用いる治療法は、小児がんの治療で一般的に行われているもので、安全性も確立されています。ただし、大量化学療法が2回行われるため、重い副作用を合併する可能性は高まります。