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事務局だより(2007年度)第3期小児がん医療学習を終えて2007年12月7日
去る9月16日(日)大阪市立総合医療センターにおいて、第3期小児がん医療学習の第一回講座「分子標的薬〜夢の治療薬か?〜」が開かれました。講師は大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科の岡田恵子先生です。 分子標的薬は現在最も開発が進められているがん治療薬で、有力なものがいくつかすでに使われています。はじめに、がん細胞の増える仕組みや、分子標的薬と従来の抗がん剤との違いをわかりやすくご説明いただきました。 従来の抗がん剤は細胞分裂そのものを攻撃するため、がん細胞と同様に分裂のスピードの速い性質を持つ他の正常な細胞の増殖も抑制してしまいます。そのため骨髄抑制や粘膜障害、脱毛などの副作用が生じます。しかし分子標的薬は、がん細胞だけにある細胞増殖の仕組み(増殖時に必要な分子や細胞表面のたんぱく質など)を攻撃し、がん細胞そのものをミサイルのように壊していきます。 この、がん細胞だけにある細胞増殖の仕組みには、【1】細胞増殖シグナルの受け取り、【2】細胞増殖シグナルの伝達、【3】細胞を増やす遺伝子にスイッチがはいる等があり、それぞれをターゲットとして薬の開発が進められています。【1】にはハーセプチン(乳がん)、【2】にはグリベック(慢性骨髄性白血病など)、イレッサ(非小細胞がん)、【3】にはCDK阻害剤などがあります。また、がん細胞が増殖のため血管を呼び寄せるという性質に着目した、血管新生を阻害するアバスチンも分子標的薬のひとつです。 これら以外にもがん細胞の増殖にはターゲットなりうる仕組みがたくさんあります。開発には時間がかかりますが、細胞増殖機能を下げ、細胞死をアップさせることでがん細胞はなくなっていくはずです。 つづいて日本で使用できる分子標的薬(使用見込みのものも含む)の紹介をしていただきました。慢性骨髄性白血病に対するグリベック、非ホジキンリンパ腫に対するリツキサン、非小細胞肺がんに対するイレッサなど。またそれぞれを化学療法と併用した場合の有効性の有無など興味深いお話もありました。 そして、分子標的薬は無敵ではないことも説明がありました。耐性の出現として、ターゲットとなる部分は変化していきますし、細胞増殖の経路は1経路ではないため抜け道が出現してきます。化学療法との併用では有効な場合もあれば妨げになることもあります。そして殺細胞効果は弱いものが多いことなど。殺細胞効果を狙うと毒性が強くなりすぎるので、腫瘍が小さくならなくてもQOLが向上すれば十分な成人がんには有用ですが、小児の場合は治癒を目指す必要があるので分子標的薬だけでは治癒は難しそうです。しかし、晩期障害や成長障害を避けられる点では、一部を除き分子標的薬は有利だといえます。 今後のがん治療に期待の高い分子標的薬ですが、日本では新規薬剤が臨床応用されるまでには最低でも10年かかります。人的資源が少ないことや、国のサポートがないこと、製薬企業が中心の臨床試験であるなど、問題はさまざまです。米国では国がノウハウを持ち、製薬会社や大学と連携し積極的に新薬の開発を進めています。開発のための国のシステムが確立されているのです。世界で最近開発された新薬を100とすると、多くの先進国において80-95が使用可能なのに対し、日本では15-20のみにとどまっています。 日本で分子標的薬を使うには、臨床試験に参加する方法があります。しかし現時点では小児を対象とした臨床試験はなく、医療者の今後の課題です。もし日本で発売されていれば、自費診療として全額自己負担にはなるものの、適応外で使用する方法があります。国内で発売されていなければ個人輸入する方法がありますが、全額自己負担となるうえ、副作用が起こっても監視する機構がありません。 最後に、分子標的薬には、耐性の出現など克服すべき問題は多く残り、成人がんと小児がんの違いは考慮しないといけないが、今後目覚ましい進歩を遂げる可能性があることや、新規薬剤開発システムの構築や地域格差など日本のがん医療をとりまく諸問題の解決の必要性を話され、「まず正しい情報を得て、かしこい患者さんになる。そして患者さんが声を大きくすることが大事」だと締めくくり、最も確かながん情報サイトとしてhttp://cancerinfo.tri-kobe.org/を紹介していただきました。 講義終了後の質疑応答では代替療法の是非や小児の臨床試験への参加についての質問がありました。 講義前にいただいた資料は難解で理解できるか不安でしたが、岡田先生はそれぞれを丁寧にわかりやすく説明され、分子標的薬の全体像から個々の問題点までを学習することができました。日本の小児がん治療に広く使用されるにはまだまだ時間がかかりそうですが、講義にもあったように、患者家族が正しい情報を得て声を大きくすることで、臨床へ応用される日を早めることができると感じました。 「緩和ケア」への取り組み2007年8月4日
************************************** 以上は、つい最近ある助成金の申請書に記載した文章です。成人がん医療学習を実施する中で、今後の方向性の一つとして「緩和ケア」への取り組みを考えています。WHO(世界保健機構)は緩和ケアを次のように定義しています。(2002年)「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな(霊的な、魂の)問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフ(生活の質、生命の質)を改善するためのアプローチである。」(日本ホスピス緩和ケア協会 ホームページの翻訳より http://www.hospat.org/what.html) すなわち緩和ケアが対象とするのは、恒藤先生が良くお話されておられるように身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペインという4つの苦痛( 詳細 )であるということです。そして私たちエスビューローとしては医療学習をはじめとするこれまでの取り組みは、まさにこうした精神的苦痛や社会的苦痛に対して、当事者の立場で共感することによって、その緩和に貢献してきたのだと思いました。今後ともエスビューローをよろしくお願いします。 智美ちゃんのドキュメンタリー完成しました!2007年4月10日
昨年の春より取材、撮影、そして編集と進めてきた根岸智美ちゃんのドキュメンタリービデオがついに完成しました。『智ちゃん、中学へ!必要な配慮とは何か?脳腫瘍の少女を支える親と医師と教師達の取り組み』と題し、約20分のDVDとなっています。これも皆様のご協力の賜物とスタッフ一同大いに感謝している次第です。 詳細は「 根岸智美ちゃん復学支援ドキュメンタリー」にてご紹介いたします。 私どもとしましては、小・中学校の特別支援教育コーディネーターの方々や、院内学級、養護学校向け、さらには小児がん患者家族や医療関係者の方々から視聴希望があれば提供してまいりたいと考えています。このビデオには小児がんの子どもたちが復学する場合や、進学を乗り越えていく上での大切な成功例が随所に盛り込まれています。教師と保護者が医師を訪ねて打ち合わせするところや、親が教室で子どもの病気の説明をする場面などは特に参考になるでしょう。小児がん患者家族の支援を目的としている私どもとしましても、この作品は大変意義深いものと自負しております。必ずや多くの小児がん患者家族に勇気を与えることでしょう。協力くださいました皆様、本当にどうもありがとうございました。これをもちまして感謝の言葉とさせていただきます。 |

