夏の暑さにも負けなかった大会終了!


  • 雨にも負けず、風にも負けず、夏の暑さにも負けなかった大会終了! 先週末の台風の中、小児がん脳腫瘍全国大会は無事終了しました。遠方から多数のご参加ありがとうございました。関係者の皆様お疲れさまでした。

    これは7月28日(土)の小児がん最新情報セミナー(第11回大会in広島)の中のプログラム「AYA世代を考えるセッション」の写真です。
  • 原ドクターからは
    AYA世代とは、思春期・青年期(Adolescents and Young Adults);子どもと成人の間、すなわち15-29歳(あるいは15-39歳)の世代であり成長の度合いが大きく異なり、多様な医療的、心理社会的ニーズがある。
    AYA世代は、健康であっても「難しい」年頃であり、自我を確立し、自立、親離れの時期であるが、経済的自立の未確立、不登校、引きこもり、ニートなどの問題を抱えがちな時期でもある。また異性関係の影響が大きい。
    思春期・青年期は親から離れ、同世代の仲間集団の中で他者とは違う自分を意識し、自分らしさを追及する時代である。同時に孤独を感じやすく、様々な心理的問題が生じやすい。 等々の話があり、さらに大阪市立総合医療センターのAMA世代病棟の紹介がありました。

    一戸ドクターからは
    発達段階に関連する生物学的・心理社会的特性が示唆されているにもかかわらず、AYA世代への支援が不十分であるとし、具体的な課題として以下のような項目が示されました。

    ①意思決定・緩和ケア:AYA世代の多くは治療方針決定への積極的参加を希望しているが現状その支援について不十分。
    ②生殖:AYA世代への生殖に関する情報提供と生殖医療との連携は十分ではない。
    ③教育:AYAの高校生等に対する特別支援教育、在籍校による教育(訪問教育、遠隔教育を含む)等の教育支援ニーズに対しては、何らかの教育支援が行われているものの不十分。
    ④就労:多くが就労の継続を希望しているが、がんの開示により不当な扱いを受けるリスクを危惧する患者も多い。
    ⑤経済:低所得のAYA・被扶養者の治療関連費やウィッグなどの治療以外の支出に対する負担感が大きい。

    そして第3期がん対策推進基本計画において重点的に取り組むべき施策として医療資源の集約化と生殖医療との連携があげられているという説明がありました。
    それらを踏まえ会場からの質問に答えながら活発なディスカッションが行われました。

    また翌日の午前にはAYA世代の3名から自身の体験談の発表、家族の発表があり、多くの参加者から大きな反響がありました。


  • 「AIはサバイバーの活躍を支援できるか?」の様子
  • こちらの写真は大会2日目「小児がんAIフォーラムin広島」の中のパネルディスカッション「AIはサバイバーの活躍を支援できるか?」の様子です。
  • AIフォーラムはお昼前の関西学院大教授丹羽先生の「合理的配慮とICT活用」のお話にはじまり、午後からの広島市立大、谷口先生はユニークなBGMのある講演で人工知能による音声認識のお話を、同じく広島市立大教授の日浦先生からは近年進歩の目覚ましい画像認識のお話を、分かりやすく解説していただきました。

    その後このように会場をレイアウトし、「こうした様々なことができるようになってきたAIが、どのように小児がんに役立つのか、特にサバイバーの生活にどのように具体的に役立つのかを考えてみたいと思います」と申し上げ、パネルをスタートしました。
    まず、こちらで用意した視覚障害のある人に役立つ「AIメガネ」の動画(日本のオトングラス、イスラエルのorcam)を流しました(午前で帰ってしまわれたYさんに本当は見ていただきたかったのですが…)。

    次に小中学生のサバイバー共通した課題「学習の遅れ」と「いじめハラスメント」防止にAIがどう役立てられるかを考えるため、河合塾と提携してタブレット型教材を展開している「AI先生(キュビナ)」(中1の数学の学習時間、平均的に200時間を要するところを32時間で学習できるという)の動画を見ていただきました。このAI教材の秘訣は生徒がどこでつまずいているのか、その問題の前段階の何が分かっていないから解けないのか、をAIが解析して生徒にとって「ちょうど」のところを提示(アダプティブ・ラーニング)できる点にあります。

    そして3つ目にスーパーの万引き防止に役立つ「AIガードマン」の動画を見ていただきました。これはまさに日浦先生の解説された画像認識の進歩のおかげです。万引きしそうな顧客の動きのパターンをAIカメラに学習させ、普通の人の動きの場合は「白枠」、少し怪しい動きの人は「黄枠」、かなり動きが怪しい人は「赤枠」で表示します。その情報が店員のスマホに通知され、店員は「何をお探しですか?」と、その顧客に話しかけることで万引きが防止できるという仕組みです。これを学校という空間に応用すると「いじめハラスメント防止」に役立てることができるのではないでしょうか。

    その後、3人の講師の先生から関連する情報やアドバイスをいただき、原ドクター、一戸ドクターからも感想やアイデアをいただきました。サバイバーはどうしても虚弱な人が多いことから、「フレイル(体がストレスに弱くなっている状態)」の生体指標を測定し、それを改善するプログラムをカスタマイズして提供するようなAIができたらいいのでは?という案も原先生から出され、患者―医療者―教育者―情報科学者が融合することで新しいソリューションが見つかるという本フォーラムの主旨に何とか迫れたのではないかと思います。

    この「AIフォーラムの報告会」は年内に関西で行います。広島の大会に参加できなかった方々には近々ご案内させていただきますので、もうしばらくお待ちください。 嵐にもかかわらず、参加していただけた方々、本当にありがとうございました。



  • エスビューロー(Es Bureau)とは

    「患児の大切な命」を中心に、それを囲む家族とドクター、ナースなどの医療従事者、その他さまざまな人たちが、お互いに理解し合い歩み寄る橋渡しとなるべく、阪大小児科で入院生活をともにした母親と、当時診ていただいていた小児科の原医師、小児外科の草深医師とともに発足いたしました。厳しい治療、長期入院、またそこから発生するストレスや不安と日々闘っておられる患児とそのご家族。医療が進歩したと言えどもまだ多くの課題や困難をかかえている状況下、患者さんの切実な願いに対して、努力を重ね治療に臨んでくださっている医療者の方々。双方における精神的負担を、円滑なコミュニケーションと相互理解により100分の1でも緩和できるよう、また必要な知識とコミュニティの提供ができる様々な活動をおこなっています。

  • 「この法人は、医療従事者と患者側のコミュニケーションを促進する・・・などの事業を行うことによって相互の理解を深め・・・双方の精神的負担の軽減に寄与することを目的とする」

    これが当団体の定款に定められた目的です。すなわち”医療者と共に設立された団体である”という特色を活かし医療者と患者の中間で相互のコミュニケーションを促進する、またはその仕組みを作ることこそ第1のミッションです。医療者は患者の気持ちをもっとよく知り、患者は医療者の本意に耳を傾けるならば、もっと医療はよくなるはずだと私たちは思っています。

  • エスビューロー ミッション

    一人で闘病するよりも、励ましあえる仲間とともに歩むほうが治療成績もよいと考えられています。患者同士のコミュニティや患者家族のコミュニティができるならば、病気の内容と治療方法、晩期障害や心的障害など互いに必要なナレッジ(知識)を蓄積して行けるでしょう。私たちの闘病経験から得た知恵を外部の研究成果を踏まえてアレンジし、後輩に活用してもらうことが続いていくなら、つらい体験もまた意味を持つといえます。ナレッジと人が交流するコミュニティづくりが、もう1つのミッションであると考えています。

  • ご寄付のお願い

    エスビューローの活動は、みなさまのご寄付で支えられています。今後も継続的に活動を支援していただけるみなさまを募集しております。 患児・家族を支えるエスビューローの活動に対する、みなさまからの暖かいご支援がとても大切です。ぜひともよろしくご協力をお願い致します。
    ご寄付について