小児がん経験者の参加を促すICF園芸事業

「小児がん経験者の参加を促すICF園芸事業」とは?

リハビリテーション医療や障害児教育分野でアセスメントに用いられている「ICF(国際生活機能分類)」を活用しながら、 連携団体「兵庫県立淡路景観園芸学校」「大阪市立総合医療センター」や、協力団体「山本農園」とともに、以下の事業を行いました。

1.心身機能の改善、活動、参加への好循環を図るためのセラピー的園芸(全5回)
2.レクチャー後、親御さんからの聞き取り、評価
3.わが子のICFシートをスタッフと共同で作成し、活用方法の習得
4.小冊子『わが子の「よりよく生きる」を実現するICF活用の手引き』を作成し配布
5.事業の成果についての報告会と、講師を招いた講演会を大阪東京で開催

報告会&講演会のお知らせ

大阪での報告会&講演会について、詳細はこちらのページをご覧ください。

東京の報告会の詳細はこちらのページをご覧ください。

セラピー的園芸・参加者レポート

第5回

2016年2月7日団体事務所

今日で園芸作業も終わりだなぁと、いつにも増して大切な一日の思い出を留めようと思い、新幹線で大阪に向かいました。1年で最も寒い時期ですが、明るくすがすがしい一日で、今日も園芸日和でした。

いつものようにビオラの寄せ植えの花柄摘みから開始しました。寒さでちょっと萎れていたので、花柄と間違えて芽をいくつか取ってしまいましたが、慣れてきたのかいつもよりスムーズにできるようになった気がしました。上地先生もそうおっしゃっていました。前回よりも寒くなっていましたが、外は明るかったので楽しくできました。エスビューローのスタッフが作った2つの寄せ植えを見て、花柄摘みをしたくなったのでK君と一緒についでにやりました。この頃、お店とかで鉢植えを見るとついつい花柄摘みをしたくなってしまいます。

しばらくすると、子どもたちが、楽しそうにエスビューローの事務所に集まってきました。次の時間は、子どもたちは上地先生と一緒に寄せ植えを作るようです。事務所の玄関にいろいろな種類の切り花が用意されていてきれいでした。帰りに上地先生が子どもたちと作った切り花の寄せ植えを見せてもらったのですが、ほんとにかわいくきれいに仕上がっていて目が惹きつけられました。

今回のセラピー的園芸活動プログラムを通して、当初あまり興味のなかった植物に親しみが出て愛おしさまで感じるようになりました。意識して大切に世話をしたり何回も見たり触れたりすることで、今まで気づかず通り過ぎていた価値を見出すことができるのだなと実感しました。この世の中の新たな楽しみを発掘できたような気がします。また、冬にもきれいな花がたくさんあるのだなということも知りました。こんなに美しいものに囲まれていたことに気付かなかったなんて、もったいない時間の過ごし方をしたものだとさえ思います。

最後になりましたが、このような素晴らしい体験をさせていただいたエスビューローのスタッフの方々、園芸療法士の上地先生、豊田先生、このような体験のための資金を提供していただいた福祉医療機構の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

第4回

2016年1月10日団体事務所

今日は寄せ植えの世話と、子ども達はタオルハンガーの制作を行いました。寒い時期でしたが、園芸作業中は寒さを忘れられるさわやかな晴れの日でした。

前回世話をしたコマツナとカブ、ビオラのプランターが、作業しやすいようにエスビューローのスタッフの方々により事務所の玄関前にあらかじめセッティングされていました。前回教えていただいた蕾と花柄を見分けるポイントを忘れていて、また先生に聞きながらの作業になってしまいましたが根気よく再び教えていただきました。寒い中、前回よりも大きくしっかりきれいに咲いていて、生命の輝きを感じました。

コマツナは、立派に育っていて、収穫することになりました。あんなに小さく頼りなかったのに3カ月でこんなに大きくたくましくなり、それを思うと感動し愛おしくなりました。コマツナを抜くときに他の株の葉っぱも取ってしまっていることを先生から指摘され、こう言う事に気を付けることも注意力や気配りの訓練になるなと思いました。

机に並べてみると全部で11株ありました。上地先生が、お店で売られているような形に整えようと言われたので、私が3株ずつもって、K君がひもで結びました。コマツナは上地先生が袋に分けてくれて、K君と半分ずつ持って帰りました。家に着く頃にはしなびたようになっていましたが、K君が「水に付ければまたシャキッとなる」と言っていたのを思い出し、水に切り口をつけておくと翌朝にはしっかりときれいなコマツナの姿になっていました。母がお味噌汁に入れてくれました。やや硬かったけど新鮮な味がしておいしかったです。

最近は、初日に持ち帰った寄せ植えのパンジーがすごくきれいに咲いていて(2株が6株に増えて花も満開です)、毎日眺めるのが楽しみです。目に触れるとスッとした気持ちになります。もう終わりかなと思うくらいしょんぼりしていた時期もあったので、植物はすごいなと思い面白くもありました。しかし、隣接して植わっていた3株のシクラメンは、全部花がなくなってきているようです。まだ株は生きているようなので、こちらの復活も楽しみです。

第3回

2015年12月12日団体事務所

今日は寄せ植えの世話と、子ども達は園芸療法士の上地先生とクリスマスのリース作りを行いました。冬に外で園芸作業をするにはもってこいの陽気で体も軽かったです。

初回に作った寄せ植え(コマツナ、カブ、ビオラ)の手入れを豊田先生と上地先生に教えてもらいながらK君と私と二人で行いました。寄せ植えの世話用の車椅子でも使えそうな机をエスビューローのスタッフの方が用意してくださり、やりやすく、初めて見る設備で、こんな良い物もあるのだなと感心しました。

まずはコマツナとカブの間引き作業です。間引きは株が密接して生えている所から成長の悪い株を抜く作業で、これにより栄養が分散せずにすむそうです。前回、コマツナが芽を出したばかりのまだ小さい時に間引きをしたものが、今回すごく大きく太くなっていて、同じものだと上地先生に教えられて、びっくりして感動しました。野菜の成長過程を感じるのは都会育ちの私には初めての体験で、野菜を愛おしく大切に思いました。

次に、ビオラの寄せ植えの花柄摘みを行いました。茎の先端よりも根本の方で摘む方が良いと上地先生に教えてもらいました。枯れかけた花とつぼみを見分けるのが難しく難儀していたら、豊田先生が見分け方のポイントを教えてくれました。花弁の端の形が開いていたら枯れた株だそうです。つぼみと枯れかけの花が似ているなんて、よくお年寄りの認知症状を見て「赤ちゃんの頃にもどった」と言われるのと似ているなと思いました。また、他の株を傷つけないように注意して上から手を入れるとよいと教えてもらいました。花柄摘みは、注意の配分や選択的注意、目と手の協応作業の評価とトレーニングに役立つそうです。上手くできたら先生方に褒めてもらい、ふだん褒められることもないのでうれしかったです。

第2回

2015年11月15日団体事務所

今日の活動のメインは、みかん狩りです。
初めに農園のおじさんからみかんの取り方やごみの捨て方の説明がありました。私は、みかん畑もみかん狩りも初めてでしたので最初戸惑いましたが、園芸療法士の上地先生に促されて取り始めるとすぐに慣れました。取ってその場で食べる贅沢な経験をさせていただき、私は6個くらい食べました。大きいみかんは、ややすっぱくておいしかったです。小さい実をもいで食べたら大きいものよりも案外甘くこちらもおいしかったです。

A君は、農園に移動するときから「疲れた〜」と言い、歩くのもしんどそうでしたが、しばらくすると木に登ってみかんを取りながらすごく楽しそうにはしゃいでいました。B君も自己紹介の時ははずかしそうに引っ込んでいましたが、お父さんと一緒に楽しそうに木の間を歩き回ってみかんを取っていました。私は、ここ数日頭が重くだるくて、今日は大丈夫かなと心配していましたが、みかん狩りが始まってしばらくするとさっきまでの心配が嘘のように気持ちがすっと楽になって、この子達と同様に楽しむことができました。自然の中で体を動かして楽になる体験も、園芸療法の重要な効果なのかなと思いました。

エスビューローの事務所に戻った後、前回作った寄せ植えの世話を上地先生の指導で行いました。終わりかけの花を茎からちぎる「花がら摘み」をすることで新しい花が咲くし、株全体の形がきれいに整うという事を教えてもらい、エスビューローの事務所に置いておくために作った寄せ植えの花がら摘みをしました。途中、複数の事に同時に注意を向けにくいという症状が露呈したので、花がら摘みは注意の訓練にもなるなと思いました。このようにミスが許される環境で認知機能訓練が受けられるのも貴重だなと思いました。


第1回

2015年10月24日団体事務所

エスビューローの事務所に13:00に集まり、園芸専門店で各自の寄せ植えを作るための植物と作業用具を購入しました。園芸療法士の上地あさひ先生より、花選びのポイントとして「はじめに主役になる花を選ぶ」「高さや色合いを意識した花を選ぶ」「開花時期の長い花を選ぶ」「この時期のお勧め:パンジー、ビオラ、スイートアリッサム」と教えてもらいました。

自分の好みの花を、店の中をくるくるめぐって探しました。長い間枯れないで、できれば来年も咲くような花を選びたかったので、買いたい花を見つけるたびに開花期間などを先生に質問しました。
店内には、人が多く、店にも段差が多かったので、視野に障害のある私には注意が必要でしたが、普段思っていたよりも機敏に動けて自信になりました。
私は最終的には、捨てがたい花もたくさんあったのですが、赤、白、ピンクのシクラメンと、人の顔に似た白いパンジーを選びました。

事務所に帰ってからは、先生の指導で参加者が持ち帰る寄せ植え作りに取り掛かりました。
先生が作ってくれた綺麗で軽い鉢に土と肥料を入れて、購入した花苗4つを好みの配置で植えていきました。
花苗の間にまんべんなく土を入れることがちょっと難しかったです。

先生からは、水のやり方や、枯れかけた花は切り取った方が株が良く育つことを教わりました。
動物なら、傷をつけたらそこから化膿したり、ショックで全体がだめになってしまうけど、植物は、免疫や再生能力が強いのだなとしみじみ思いました。

K君の寄せ植えを見て、私のに比べ立体的で奥行きがあり見栄えがしたので、最初の先生の指示にあった「高さを意識する」ということを念頭に置いて、もっといろんな高さのを選べばよかったかなと思いました。

終了後、寄せ植えを持ち帰り、庭の、窓を通して居間のよく座る座椅子から見える所に飾りました。見るたびにちょっと心が洗われる気分になります。
鉢植えは、長く見つめていたい時に見つめていても動かないし、気まずくならないのでいいなと思いました。

寒くなってくる秋には、植える花もあまりないだろうと当初思っていましたが、いろいろなきれいな花がまだまだあり、目からうろこの体験でした。帰り道でK君と、道端の花壇を見たら、いつもと違い興味深く美しく目に飛び込んできたので、植物を長く見ていると、こういう効果もあるんだなとK君と一緒に話し合っていました。私は、動物の方に圧倒的に興味があったけど、動かない植物の良さを発見しました。世の中の美しさを、一つ多く感じ取れるようにしてもらったような気がします。


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